出典:© 2017「メアリと魔女の花」製作委員会
『メアリと魔女の花』というアニメ映画はスタジオ・ポノックにより製作されたものです。スタジオ・ポノックの代表はプロデューサーの西村義明氏であり、米林監督の作品を独立した形 で世に残すために起業されたものです。(宮崎駿氏で有名な)スタジオ・ジブリのアニメーターが8割で、ジブリを去った後に、新たに立ち上げたスタジオがポノックです。
ジブリ時代の仲間以外にも日本を代表するアニメーターが集結してスタートしたポノックの第 1作が『メアリと魔女の花』です。ジブリは宮崎駿氏が何度も引退宣言したり高畑勲さんが亡くなったりとアニメーターの高齢化が進む中で、その意志を継いで新たなステージを切り開いたことは一般社会 (特にファミリー層)に大きな衝撃を与えました。
興行収入は35.3億円で、後にTVでも放映されるなど話題になりました。名作『魔女の宅急便』を思わせるファンタジックな描写が鮮烈な色気を演出しています。親子 2世代で魔女の物語を共有できることはアニメーション界にとって も良い影響を与えているでしょう。
『メアリと魔女の花』あらすじ
物語は赤毛の魔女の逃避行から始まります。魔女は光る花を持っており、追っ手を振り払う間に森に花の種を落としてしまいます。そしてそれは、昔のお話です。現代に時間を進め、主人公の同じく赤毛のメアリはその森のある村に引っ越してきました。ある日、森で黒猫のティブの導きにより、綺麗な花を見つけたメアリはその花を手にします。すると、光る花は不思議なオーラを発しメアリを包み込みます。
この花が 7年に 1度しか咲かない魔法の花『夜間飛行』という名の花だったのです。そう、その昔魔女が森に落とした花です。メアリのもとには、(その昔その花の種を落とした魔女の)ホウキがやってきます。普通の人間であるメアリにとっては1夜限りの魔法使いです。魔法のホウキが導くままに向かった先には魔法大学がありました。 メアリは魔法の世界で、人間であることを隠して入学試験を受けることになります。
『夜間飛行』の魔術は強く、メアリは飛び級で大学に入学することになりました。しかし、魔法の花のことがマダム・マンブルチュール校長にばれるや否や、メアリは追われる身になります。魔女たちはとても長い間、魔法の花『夜間飛行』を探し求めていたのです。入学手続きの時にマダ ムの部屋から持ち出していた魔法について書かれている本を武器に、魔法界に潜む悪を根絶しようと努めるメアリです。
人質に取られていた友人のピーターや黒猫ティブの相方白猫ギブを助けるために再び魔法大学へと向かいます。森で捕らえられ動物実験に利用されていた獣たちの魔法をメアリが解いた時、魔法大学への反撃が始まります。
平和的な精神が美しく描かれている
『メアリと魔女の花』という映画はおそらくアニメーションを魔法として捉えた作品です。『魔女の宅急便』で、宮崎駿氏が描いた魔女は、魔法を受け継ぎながらも魔力を失い葛藤を続ける少女の姿でした。一方のポノックの描く魔女の姿は、現実的で等身大の少女の夢のように思えます。
赤毛であること以外にとりわけ特徴のない素朴な少女が、 古き伝説の花の力により 1日だけ魔女になれるという設定は「シンデレラストーリー」 のようで、一般層にも共感を与えます。
原作はイギリスの女性作家メアリー・スチュア ートの作品「小さな魔法のほうき」です。自分の居場所を見つけた時や伝統文化を語り継がれる時、私たちもメアリの姿を思い起こすことでしょう。魔法の花を、局所的なレガシーと捉えると、先人の残した伝統という財産が尊いものに思えてきます。この物語は、ジブリの意思を受け継ぎ、監督という立場でアニメーションという魔法を紡ぎ出している米林宏昌氏の姿を、謙虚な姿勢で表現します。
想像力豊かなメアリという少女に具象化することでスタジオジブリに感謝の念を込めているように見えます。私たちと同じ人間が魔法界に飲み込まれることなく人間であることを自由に表現することの大切さ、人間の力に限界があるからこそ主張できる平和的な精神が美しく描かれています。 正にスタジオポノックの処女作にふさわしいストーリーになっています。
ファンタジーアニメが好きな方に是非とも見て頂きたい
スタジオジブリから派生したスタジオポノックの処女作『メアリと魔法の花』は、アニメーション界に旋風を巻き起こした話題作です。主人公は魔法の花の力で魔女になった赤毛の女の子。でも魔法にはタイムリミットがあり、魔法の花には悪の心から遠ざけなければならない理由がありました。
人間界と魔法界のバランスが崩れ始める時、メアリは伝説の魔法使いになろうとしていたのです。良い面も悪い面もある魔法の世界に人間の正義が現れた時、本質的な魔力とはいかなる反応を示すのか。ファンタジーアニメの真骨頂です。
文章:Shinichiro.S