出典:©2005 BONES/Project EUREKA
『交響詩篇エウレカセブン』は、メディアミックスの作品として有名になったものであり、漫画、TVアニメ、劇場版映画、プレイステーションのゲームなどで日本文化のあり方を変革させた、ターニングポイントとして重要視される作品です。
製作は、製作委員会 「Project EUREKA(プロジェクトエウレカ)」と協賛企業グループ「EUREKA Partners (エウレカ・パートナーズ)」がタッグを組んでプロジェクト化したもので、単行本(漫画)は、2005年 3月号から 2007年 1月号まで「少年エース」で連載されていて角川コミックスから全6巻が発売されました。
小説版は全4巻発売されており、アニメも含め 3つ のストーリーは完全にオリジナルであり、基本的な題材以外は、それぞれ全く別のストー リーを楽しむことができます。今回はその中でも特に子供に人気の高かったTVアニメについて紹介していきたいと思います。
『交響詩篇エウレカセブン』あらすじ
TVシリーズのエウレカの物語は全50話あります。主人公はレントン・サーストンとい う14歳の少年です。後に、スカブコーラルという地球にとって未知の力が復活するのですが「ファースト・サマー・オブ・ラブ」と称される前回のスカブコーラルの暴走を食い止めたのがレントンのお父さんのアドロック・サーストンでした。スカブコーラルとは地球外生命体が侵入したものとされており、知的生命体で人間と対話するために進化を続けているものです。
いわゆるファンタジーに出てくる形態が定着しないカオスのようなものです。このスカブコーラルと密接な関係にあるのが『エウレカ』という少女です。有人ロボット「ニルヴァーシュ」と共に突如としてレントンの前に現れたのは運命なのかも知れません。その後、エウレカとレントンは地球革命軍として力をつけていた 「ゲッコーステイト」のフラッグシップに搭乗し、仲間として認められます。
漫画版では描かれていない部分でキーマンとなるのがヴォダラク教の高僧ノルブです。知的生命体との共存こそ人類の歩むべき道筋だという考えにより「サマー・オブ・ラブ」の仕掛け人として暗躍します。エウレカはもともとコーラリアン(地球外生物)でありレントンの父親に軍所属時代に色々なことを教わっていたことが明らかになります。
まさに運命の巡り合わせです。スカブコーラルの核心に迫るたびにエウレカはやつれていきまし たが、ニルバーシュという共通の「生きるための力」を支えに手を取り合って第2の「サマー・オブ・ラブ」を止めるために旅を続けます。
『非常な運命を抱える少女に涙する』
アニメ版ではアドロック・サーストンは、スカブコーラルとの共存を望んでいたとされています。対して過激派宗教集団として描かれるヴォダラク教のノルブもスカブコーラルとの共存を語りますが、明らかにアドロックとは異なる信仰でした。
ネイティブである地球人を尊重しようとするアドロックに対して、ノルブはコーラリアンによる地球の支配を容認し、自らがそのパイオニアになろうとしていたのです。この辺のストーリーが漫画版では全く描かれておらず、コミックスではエウレカの軍事利用とそのトラウマが鮮烈に描かれており、レントンという心の支えにより、自分がコーラリアンであることを克服して人間になろうとする様子が描写されています。
日本のロボットアニメには必ず、こうした「自らが脅威になりうる」だとか 「本当は味方同士であるべきなのに戦場という無情な運命に葛藤する姿」がつきものですが、 特にこの作品はエウレカという非情な運命を抱える少女の心の描写に胸を打たれます。
『年頃の女の子に共感を与える物語』
物語はエウレカとレントン、そしてノルブの関係性を中心にして進みます。
「ゲッコーステイト」の仲間たちとの描写も多く、コーラリアンであるエウレカがゲッコーステイトの子供達に ママ扱いされているのも印象的です。もう一人のコーラリアン「アネモネ」が軍の指示に従っ て飼い犬のような扱いを受け、精神が崩壊していく姿もまた印象的です。
基本的に子供が見るために作られたストーリーなので、コミックよりもファンタジー感が強いかと思います。身体が変化していく年頃の女の子にも共感を与える物語になっているのではないでしょうか。
文章:Shinichiro.S