出典:©宮澤伊織・早川書房/ DS研
ネット上で噂される都市伝説に登場する怪異たちがうごめく「裏世界」
女子大生の紙越空魚(かみこし そらを)は、たまたま発見した扉から入った裏世界で「くねくね」に襲われ、命尽きようとしていた。
そこを同じく女子大生の仁科鳥子(にしな とりこ)に助けられ、九死に一生を得たものの、くねくねと接触した影響で空魚は右目に「裏世界を見通す力」を、鳥子は左手に「裏世界の存在をつかみ取る力」がそれぞれ宿る。
空魚が見通し、鳥子がその左手で裏世界への道を拓くのだ。
鳥子には過去に裏世界ではぐれた家庭教師のお姉さんを探すという目的があるが、一方の空魚は「何でわたしが?」という思い。
当初は気乗りしないまま、探索活動に同行していたはずだったのだが、空魚の心境に徐々に変化がみられるのだ。
お金が手に入るから
オカルトを研究する小桜さんという方がいらっしゃる。
その小桜さんが、裏世界から持ち帰ったアイテムを高く買い取ってくれる。
毎回ひと仕事を終えた後は、お金を山分けして二人で楽しく食べ放題飲み放題の楽しい時間。
鳥子が心配だから
ケンカ別れして、たとえ一人になっても裏世界で人探しする鳥子。
そんな鳥子の身を案じ、結局空魚も裏世界へ同行する。
そばで鳥子を眺めながら美人だなぁとは思う空魚だったが、鳥子の首筋をつたう一筋の汗に一瞬ドキッとしてしまう。
鳥子に?そっち系?自分の気持ちに戸惑う空魚であった。
置いてきた米軍がどうしても気になったから?
裏世界で出くわした沖縄米軍。
彼らも訓練中にたまたま裏世界へのゲートをくぐってしまい、そのまま足止めされているという。
ふたりは、その右目左手の能力から怪異と疑った一部の米兵に追われ、一旦は現実世界に逃げ帰ったものの、どうしても米軍を助けたいと再び裏世界へ。
米軍を助けたいというのは口実で、鳥子との時間が欲しかったのではないだろうか?
移動手段として走行車まで手に入れて、裏世界をドライブとしゃれこもうとする。
もはや空魚のほうが鳥子を連れ回そうとしておる。
いつか空魚は鳥子を・・・。
命懸けの女子大生二人旅の結果
こうして見ると、裏世界自体が「吊り橋効果」のテーマパークになっておる。
空魚の目的は、もはや誰の目にも明らか。
どんどんそっち系へ突き進んでいく空魚。
ここまでくれば空魚の願いは「ずっと鳥子の尋ね人が見つからなければいいのに」であろう。
鳥子は人探し、空魚は鳥子狙い。
空魚の右目は裏世界は見通せても、自分の未来は見通せないのであった。
文章:百百太郎