出典:©原泰久・集英社/NHK・NEP・ぴえろ
紀元前の中国が舞台
2019年に実写化され、最も話題になった漫画作品『キングダム』のテレビアニメのバージョンがあるのをご存知でしょうか?
歴史的背景は秦国(しんこく)が全盛期だった紀元前の物語です。かの有名な『三国志』が西暦200年〜300年の間の物語なので、『キングダム』は、それよりもずっと前の物語になります。信(しん)という一人の少年の成り上がりを見事に描いた世界観が抜群の作品です。
クーデターの最中で‥
舞台は紀元前の中国にある秦国、主人公は信(しん)という一人の少年です。信は「天下の大将軍」を目指し王都で野心を燃しながら生活しているのですが、ある時王都が、クーデターの波にのまれてしまいます。
そこで秦の王・贏政(えいせい)と出会った信は「中華統一」という目的を共有し、戦場へとその身を置くことになります。しかし、秦国は、六つの大国、斉 · 楚・燕・韓・魏・趙を敵に回すことになり絶体絶命の窮地に立たされます。
信と贏政はこの困難な状況を打破し、中国の統一を成し遂げることができるのでしょうか。物語は続きます。
劇画の王道
先ず、劇画タッチの迫力満点なアニメーションに圧倒されます。劇画タッチだけどスマートな印象の描写は、戦場の卑劣さをまざまざと見せつけてくれます。
印象としては戦闘シーンが多く、テンポよく見通せる作品ですが、大河ドラマのような社交性も魅力の一つです。ヒーローイズムという言葉がよく似合う野心を持った主人公の振る舞いは好感を持てます。アジア大陸の壮大な景色の中で主人公の信が馬に乗って駆け回る姿は圧巻です。原作漫画の躍動感をそのまま受け継いで圧倒的なシーンを次から次へと展開する流れは、見ていてグッと引き込まれます。
チャイニーズドリーム
主人公の信は下僕として生まれました。日本の漫画、宮本武蔵と佐々木小次郎を描いた『バガボンド』にインスピレーションが近いなという印象です。
贏政は、31代秦王であり、のちに語り継がれる始皇帝です。なぜこの始皇帝が主人公の漫画を作らなかったのか?という疑問にたどり着きますが、恐らく始皇帝という存在は『歴史上の情報』だからなのだという結論に至ります。下僕でありながら、始皇帝にその真価を認められ千人将「飛信隊」隊長にまで上り詰める信の姿こそがドラマティックであり親近感を表現するためのポイントなのだと思います。
まとめ
アメリカンドリームのように、野心家が差別を乗り越え成功する姿を描く物語を、中国の伝説的なエンペラー「始皇帝」の歴史と関連づけて日本産アニメーションとして作品化することはとても価値のあるものだと思います。
子供用に始皇帝の歴史を漫画化した文献は以前にもあったと思います。しかし、今作『キングダム』のテーマは歴史的事実に留まらない大きなテーマがあると思います。テーマは「戦う自由」物語は壮大な人間ドラマへと発展します。
大陸における皇帝のあり方を学ぶことができる良作だと思います。ぜひ一度ご覧ください。
文章:Shinichiro.S