出典:(C)河森正治、ロマン・トマ/サテライト/バスカッシュ!製作委員会・MBS
このアニメの原作は、日仏共同でアニメ用に作られたもので、世には出ていません。のちに小太刀右京(こだち うきょう)さんの手により小説化されています。
バスケットに対する固定観念を尽(ことごと)く破壊されスポーツの原点ともいうべき暴力と紙一重のお祭り騒ぎのような状態を近未来的に表現した作品がこの『バスカッシュ!』です。漫画や小説版も特に、バスケットファンならばコレクションする価値のある作品だと思います。
初見、安易なロボットアニメ、簡素なSFといった印象が、この作品の回を重ねるごとに裏切られる感動すらする作品です。メカニックデザインにも注目です。
命がけの戦いに挑む
メインはバスカッシュという(ロボットによる)バスケットボールのゲームについてのお話です。舞台はアースダッシュという惑星であり、そこには「バスケットボールによって世界が創造された」という言い伝えがありました。人々はビッグフットというロボットを操りこの惑星の「星の技」ともいえるバスカッシュに熱狂していました。主人公は都市ローリングタウンに住む少年のダンです。妹がバスケ選手としての選手生命を失う不幸な事故に巻き込まれたことによりダンはバスカッシュに命を投資する決断をします。ビッグフットにより車椅子になった妹のためにダンはビッグフットで戦う決意をしたのです。
原作漫画を検証
『ダッシュ四駆郎』で観て受けた幼さと躍動感、類まれな文化的背景の描写に似た印象を持つこの作品。必ずや子供達の感性に響くことでしょう。セリフを落としても伝わるわかりやすさ。ルールや駆け引きを置いておいてもなお冴える躍動感。この作品には確かにバスケットボールに対する敬意と柔軟な発想から生まれる格好良さがあります。鑑賞する側も既成概念を捨てて柔軟な想像力を駆使しなければなりません。
スポーツやゲームに参加することの楽しさ、勇気を表現しながらストーリーの骨格であるドラマ性をしっかり視聴者に伝えていることがこの作品の最大の魅力でしょう。
復讐
妹をバスカッシュの防具ビッグフットにより命の危機に晒されたダンは、最初はバスカッシュ自体を憎み、代償を払わせようと破壊行為を繰り返します。しかし、バスカッシュには寛容な側面がありました。その自由度にいつしかダンは没入します。
政治的でもあり社会問題でもあるバスカッシュというスポーツのリスクは時に影を落としますが、その自由度は新教の元にあるもので壮大な説得力を持っていたのです。決してファンタジーに偏らない筋の通ったストーリーだと思います。
青い野心
主人公のダンはまだ14歳と多感な時期です。暴力ではなくゲームで世界に何かを訴えかけることを知った14歳は強いです。
個人的にはミユキ・アユカワという少女が気になります。祖父がビッグフットの整備士で、ダンとは幼なじみです。彼女の寛容さがダンの心の支えになっているような気がします。ダンはバスカッシュの伝説的存在になることができるのでしょうか。
文章:Shinichiro.S