1972年に週刊少年マガジンに連載されて、即テレビアニメ化された質の高いストーリーが持ち味の『デビルマン』を紹介します。通常即テレビアニメ化というのはとても稀有なケースです。
デビル・ロマンス
主人公・不動明に纏わる話にはロマンスが盛り込まれています。魔王ゼノンの命令で「人間界を滅ぼす」という明確な目的を持ったデーモン族のデビルマンは、人間の不道明の体を乗っ取り人間界を闇に葬ろうとしていました。ですが、それを阻止したのが、美樹という一人の女性でした。デビルマンは美樹を守るため人間に味方し、デーモン一族に反旗を振りかざすことになります。
重要なのはコンセプト
このストーリーはテレビ向けに大きく改変されており、漫画版では不動明という人間がデーモン族を討ち果たし、その能力を吸収することにより「デビルマン」になるというストーリーになっていますが、アニメ版ではデーモン族の一人がデーモン族を裏切り人間社会を守るために戦う様子が描かれています。しかもアニメ版は1話完結でデビルマンが幼獣と戦う設定になっており、時を同じくして最終回を迎えた漫画版に対して、まったくの新境地を開拓しているのがテレビ版『デビルマン』です。
最高のリスクとヒーローとしての素質
設定としては日常では高校生の格好をしているのですが、デーモン一族が送り込んだ幼獣と戦うときだけ「デビール」という掛け声とともにデビルマンに変身するのです。
このデビルマンの姿形と人間に対する愛情が当時の子供達にとって、最高のヒーローだったのです。
絶妙なキャラクター性に注目
描画の印象としては石ノ森章太郎や手塚治虫に似た感覚を感じとることができます。
昭和の後半のアニメ業界では、実に壮大で、人間らしさの詰まった作品が世の中に多く発表されました。そんな中でも日本のダークヒーロー物の決定版としては『デビルマン』のような圧倒的な実力を持った怪物が人間社会の本質を見抜きコンプレックスを持ちながらも愛や平和の巣に棲みつくというストーリーが、新鮮でありながらダークヒーローの王道をいっているという印象を受けました。
同時に、昭和の男の優しさのようなものがにじみ出ている作品だと思います。
永井豪さんが原作者
原作者の永井豪さんは『マジンガーZ』『キューティーハニー』などのメディアミックス作品を手掛けた日本文化の代表的な貢献者です。
元々は石ノ森章太郎氏の元でアシスタントをしていた方なので作品を見た人であればその辺のつながり(描写や色彩)もお気づきになっているかもしれません。またこの人物は子供の頃に手塚治虫の『ロストワールド』を読んで深く感銘を受けて漫画家を目指したことから、そういった日本の漫画界の縦の時系列に名を刻んだ人物としても重要な存在です。
世代を超えて受け継がれる世界観
そしてこの作品の魅力は世代を超えて受け継がれ、2018年の正月にはNetflix限定配信で全10話の『DEVILMAN crybaby』が放送されました。
大事に大事に次の世代へと語り継ぐべき作品なのかもしれません。
文章:Shinichiro.S