出典:©石森プロ・東映アニメーション
今作・テレビアニメ『サイボーグ009(1968年)』に先んじて映画『サイボーグ009(1966年)』と『サイボーグ009 怪獣戦争(1967年)』が好評を得ました。
原作漫画を描いた石ノ森章太郎氏は、昭和の漫画、若しくはアニメーションの父とも呼ぶべき名作家であり、日本のアニメーション業界に大きな影響を与えた人物です。
グローバルな設定も、近代日本文化の魅力が満載
物語の主要な舞台は日本であり、日本に在住している009、001、003、006、007が日本在住であるためこのメンバーを中心にストーリーが展開されています。サイボーグとは義体化のことであり、倫理的に問題はないのか、と疑問も抱きながらも興味は尽きない作品です。
001に関しては、初登場時点では赤ん坊であり、ますます考えさせられる設定になっています。そんな中でも注目したいのは、変身できる007号の能力でしょう。完全に科学の見地から抜きん出ていて、この物語のファンタジー性をよく表しています。
勿論サイボーグ研究の最高傑作にして技術の結晶である009にも注目です。魅力的なキャラクターと黒幕のいない、割と平和な環境でのストーリー展開が印象的な名作です。
世界観がワールドワイド
日本在住のメンバーが圧倒的に多い割には日本人のメンバーは009(島村ジョー)一人となっています。しかも父親が外国人というハーフなのです。こういった設定を見ていると、日本アニメを海外に紹介する意識というのが見て取れて、現代でいう『One Piece』の世界的成功を予見していた様にも捉えることができます。世界中の子供たちを楽しませたいという志に感服します。
最強の戦士『サイボーグ009』
既に7人の被験者がブラックゴーストの手により擬態化されており、それまでの技術の結晶を託されたのが009でした。ハンサムで涙もろい性格を持っているジョーは視聴者にも人気が高かった様です。それにしても「ブラックゴースト」というネーミングはどうかと思いますが‥。「ブラックゴースト」は顔や表情もこの世のそれではないようで、正義の味方とは言い難い風貌です。最近では誤った手術で食人鬼になる『東京グール』なども人気ですが元祖悲劇のヒロインといえば『サイボーグ009』かもしれません。
作風は昭和アニメの王道的描画感
アニメ本編の画風は手塚治氏の『鉄腕アトム』などにも近しいものがあり、まさに昭和の時代の子供たちが待ち望んできた、理想的な”屈強で優しい大人の男像”が当てはまります。
この作品が誕生した1968年には白黒テレビでの放送になっており、漫画の表紙でしかそのキャラクターの全貌が明らかにはなっていませんでしたが、それすらも演出の一つとして成り立っていたのは、昭和時代を生きた子供たちの想像力のたくましさと言えるでしょう。
文章:Shinichiro.S