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第一期・第9話「青山スランプマウンテン」
はじめに
今から10年前ぐらい。
チノのおじいさんがまだご存命の頃。街の大きな公園で、枯葉を踏みしめながら、ため息をつくのは、チノのおじいさんでした。
「はああ。苦労して建てた念願の喫茶店だが、経営が軌道に乗らんのう……」
「いっそ、うさぎにでもなれたら、どんなに楽かのう……」
そこへ、木組みと石畳の街に遊びに来た(恐らく家族旅行であろう)ちっちゃなココアが、おじいちゃんの横にちょこんと座って、ティッピーを膝の上に乗せて、おじいちゃん、こんにちは! と無邪気にご挨拶するのでした。
おじいちゃんは「ああ、こんにちは」と、やや力ない返事。
すると、幼いココアが、「おじいちゃんが、うさぎさんになれますように!」とおまじないをしたのです。
……あれから10年ぐらい。まさか、本当におじいちゃんがアンゴラウサギになろうとは。
演劇部の助っ人を頼まれたリゼの、乙女化改造計画!?
「演劇部の助っ人を頼まれたんだ!」と、ラビットハウスの面々に告げるリゼ。
照れながら「オペラ座の怪人のヒロイン、クリスティーヌだ」と頬を赤らめます。
「確かに、わたしにはおしとやかさには向いていないのかも知れない」と言うリゼに、ココアが、電話を手に「じゃあ、千夜ちゃんとシャロちゃんにアドバイスをもらおうよ!」と言います。
どうやら、電話で千夜にメッセージを打っているようです。
リゼ、千夜の助言で「魑魅魍魎も恥じらう乙女」になれるのでしょうか?
リゼ、シャロの助言でお上品になれるのでしょうか?
「やっぱり、わたしには向いてないな、クリスティーヌ役は断って来るよ」
すると、同じ甘兎庵のテーブル席で話を聞いていた青山ブルーマウンテンさんは?
「やりたいことを諦める必要が、どこにあるのでしょうか?」と問うたのでした。
――後日、ラビットハウスで。
「うわあ、これがリゼちゃんが演じたクリスティーヌかー。拳銃持って怪人と戦ってるー」
「最初っから、脚本をわたしのキャラに合わせたかったらしいんだ……」
作家、青山ブルーマウンテンさん、失職中?
チノが歩いて学校から帰っていると、道すがら、公園の方から、原稿用紙で作られた紙飛行機が飛んできたのでした。
その紙飛行機には「失職」と書いてあり、小説家の仕事を辞めた、という青山ブルーマウンテンのもので、チノはそんな彼女を、とりあえず、まあ、ラビットハウスに連れてくるのでした。
「ところで、白いお髭のマスターは? わたし、ずっとお会いしたくって……」
「知らなかったんですか?」
「チノちゃんのおじいさんは、とうに亡くなられているの」
「え? でも、この間、お声を聞きましたよ?」
「会いた過ぎて、幻聴を聴いているんだ……」
というわけで、青山さんは、その事実を今の今まで知らなかったのです。学生時代に、よくその「白いお髭のマスター」のアドバイスを受けて小説を書いていたという青山さんなのでした。
代わりにと、チノに勝手にココアが差し出したのがティッピー。
(このコーヒーの香り……マスターにそっくりです。もう本当にいなくなってしまったのですか?)
ココアと相談して「人生相談所」をカウンター内に開設した青山さん。
なんでも、タカヒロさん(チノの父)が、とても人の悩みに親身に寄り添っているから、青山さんもそういう存在にあこがれたのだとか。
「悩み多き子を連れて来たわ」千夜が連れて来たのはシャロ。
もちろんですが、シャロはコーヒーを飲むと、カフェイン酔いをすることで有名。
最初はこの後バイトがあるので、遠慮すると言っていたものの、憧れのリゼがブレンドしたコーヒーだと知って、ごくごく飲み干すシャロ。
が、しかーし! ブレンドの違いによって酔い方が変わるらしく、今回のシャロは泣き上戸でした。
「やってらんないですよおおおー」と青山さんの前でおいおい泣き出す始末。
そんなバカな! と思ういつもの面々。
酔いから覚めたシャロが「青山さん、そんなに簡単に小説家辞めちゃって良かったんですか?」と問うと、青山さんは「本当は、続けていたかったんですけど……わたくし、マスターからいただいた万年筆を失くしまして、さっぱり筆が乗らなくて……」「ココアさんと最初に出会ったところまでは、確かにあったんですけど……」
ティッピーのおかげで、万年筆が見つかりました
青山さんの記憶が正しければ、公園に落としたはず!
というわけで、公園のベンチ付近を懸命に探す、ココアとチノ(とティッピー)ですが……ココアはすぐに飽きて、うさぎと追いかけっこを始める始末。
「探す気あるんですか!?」とチノが一喝。
「ピンポイントでここに落ちてるはずないです、ねえ? ティッピー」とティッピーの方を振り返ると、ティッピーが見つめる先に「お髭のマスターがくれた万年筆」が見つかりました。
チノはティッピーに「おじいちゃんとティッピーが何でこうなったかは分かりませんが、みんなに内緒にする必要はもうないのですよ? だから(青山さんを直接)励ましてあげてください」
カウンターにいる、青山さんと、ティッピー。
「せめて、この本(うさぎになったバリスタ)だけでも読んで欲しかった……」すると?
「面白かった。が、主人公より、息子の出番の方が多かった」
「大変ですー! このぬいぐるみから、マスターの声が!!」
「それじゃない!!」と、チノちゃんは言うのでした。
まとめ
その後、万年筆が戻った青山さんは、ふたたび小説を書き始めるのでした。
物書きにとっては、筆記用具と言うのは、本当に大切なものだったんですね。
とりあえず、元通りに見つかって、めでたしめでたし。
文章:T兄さん