アニメコラム

青春真っ盛り『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』テーマソングはsecret base〜君がくれたもの〜(2011)

出典:©ANOHANA PROJECT

2011年当時、圧倒的な支持を得たこの作品は、大人の中に宿る幼さや、大人になっても消えない絆を描いた作品です。脚本は岡田麿里さん。この人は小説版も担当しています。

監督は長井龍雪さん。『ハチミツとクローバーⅡ』や『とある科学の超電磁砲』で監督を務めた、実力者です。あまりにも確信犯的に、視聴者を泣かせようと組み上げられたストーリーは、何度見てもやはり涙が出ます。人ごとではないような不思議な感覚になる作品です。

ボーイ ミーツ ガール

主人公は「じんたん」という不登校の高校生です。彼の周りにはいつも幼なじみの「メンマ」がいます。あの幼い日に天国へと旅だったはずのメンマが‥。じんたんはメンマのことが好きでした。そしてメンマもじんたんのことが好きで、二人は幼馴染みのメンバー6人でつくった「超平和バスターズ」のメンバーでした。超平和バスターズ公認の初恋にして永遠となる絆で結ばれるはずだったメンマとじんたんは、じんたんの恥ずかしさから生まれた言動で台無しになってしまいました。

そのメンマが、高校生に育ったじんたんの前に現れ、メンマの死以来壊滅状態だった「超平和バスターズ」にも(見えざるメンマとして)認知されるようになります。メンマの言う成仏するための「願い」とは?最後まで泣かせてくれる作品です。

ココロの明暗

アニメ序盤から子供ならではの戯れあいや、くだらない下ネタが飛び交う展開には先が思いやられると思った視聴者の方も多いと思います。しかし、幽霊のようなメンマの振る舞いを軸に、決定的なストーリーのオリジナル性や感動的なまでのキャラクター同士の絆が見えてくるのです。誰もが深い病みを持っていて、でも誰もそれがメンマのせいだとは思っていなくて、結局はメンマが生き霊として、現世にいられるのは幼なじみ達の心に宿る優しさのおかげなのだと感じられるのです。最初から最後まで「人の優しさ」に満ち溢れた作品です。

ゆきあつの暴走

キャラクターに共通することとして、幼馴染みを事故で亡くしたショック(決して歪まず真っ直ぐで切ない感情)があると思います。ただ一人彼女の死から抜け出せずに心を歪ませようとしているのが「ゆきあつ」というキャラクターです。

本当はメンマと両思いだったじんたんなんかよりよっぽど深い病みを持っています。幼き日のリーダーはじんたん、高校生になって再び集結した「超平和バスターズ」でみんなを引っ張るのはゆきあつでした。なのに、じんたんと(じんたん以外には目には見えない)メンマの関係をうまく処理できずに暴走してしまいます。正直、ゆきあつの行動は共感できるものではありませんでした。しかし、メンマという心の器を引き合いに出したときに、ゆきあつの行動は「甘え」とも取れるものなのだと気づきます。

まとめ

非常に刺激的な作品です。ほがらかで、ほのぼのとした気持ちの良い抑揚のある物語ですが、それぞれの闇ではない個性・感情がそれぞれに刺激的です。この作品を見て救われた方は多いでしょう。『絆』は大切にしなければ、と改めて思いしらされる作品です。

 

文章:Shinichiro.S

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