この物語は京都アニメーションの自社ブランドKAエスマ文庫で暁佳奈(あかつきかな)が原作の作品を京都アニメーションが2018年の冬にアニメ化した作品です。
「愛している」を知りたい
この作品の舞台は19世紀のヨーロッパの様な世界感をもった架空の大陸です。この物語の主人公は孤児で先の戦争で少女兵として参加し、そこで両腕を無くして普通の腕の様に動かせる義手を身に着けた喜怒哀楽の表情の変化が乏しいヴァイオレット・エヴァーガーデンという少女です。
彼女は上司のギルベルト少佐が生存していると信じ病院生活を送っていました。そこにギルベルトの同期のホッチンズ元中佐が病院を訪れます。そして退院後、彼女はライデンシャフトリヒの首都ライデンで彼が起こしたC.H郵便社で働く事になります。そこで彼女はその会社の中で女性職員が「自動手記人形」と言われるタイプライターを使った手紙の代筆をしているのを見ます。
そこでは「愛している」と言う言葉が普通に使われていました。そしてヴァイオレットがインテンスの戦いで負傷した少佐と別れる直前に言われた「愛している」と言う言葉の意味を知りたいと願い彼女は自動手記人形へとなろうとします。彼女は何においても少佐の命令に従う様に生きて来ましたがその時は少佐の言葉の意図も意味もくみ取れずにいました。
自動手記人形になる事は彼女が仕事を通して人と人との思いを学んでいく事でした。
心の琴線に触れる感動作品
この物語では手紙という物が重要な意味を持ちます。届かない手紙は一枚もないと人が手紙を書く意味を教えてくれます。それは届かない人の思いは一つたりともないという事です。
ヴァイオレットは戦場では武器として扱われ、人を殺すこと以外に知らなかった彼女が手紙を代筆する仕事を通して人の感情に触れて人間らしい感情を知っていく所がこのアニメの見所の一つです。彼女が人を亡くすという事で物語の中盤以降涙を流すシーンはとても感動的であり、人を殺すという行為がどれだけ罪深いかと言う事で自分の過去にしてきた行いに苦悩する姿や、ギルベルトの死を知らされた時の彼女の絶望、そしてその事実を知って立ち直る姿も見所ではないでしょうか。
筆者はホッチンズの「自分のして来た事は消す事が出来ない、だが自動手記人形としてやって来た事もまた消せない」と彼女に対して諭す姿はとても心に残りました。
映像の美しさにも感動
この物語を語るのに京アニが誇る独自の映像美はこの作品でも遺憾なく発揮されています。彼女が自動手記人形として出張する際に訪れる様々な場所がとても美しく描写されています。
そして彼女が出会う事になる登場人物達がその出会いを通して胸の内に秘めた思いを表して行く姿は視聴者の心に訴える様に出来ています。実際恥ずかしい話ですが自分はこの作品を見て泣きました。
文章:harry.