出典:© 2010 Studio Ghibli・NDHDMTW
監督を務めた米林宏昌氏はのちにスタジオ・ポノックを立ち上げる、まだ40代の若手アニメーターです。メアリー・ノートンの『床下の小人たち』という原作があり、宮崎駿氏の書いた脚本を任されたことで、当時のスタジオジブリの変革が話題になりました。広い意味で日本のアニメーション業界の流れをも変えた作品でもあると思います。
不本意な出会い
主人公のアリエッティは14歳の小人の少女です。郊外の古い屋敷のゆかしたで、両親と3人で借りぐらしの生活を送っていました。アリエッティも14歳になったので初めての「借り」を行うことになりました。アリエッティは角砂糖を手に入れ戻ろうとしますが、そこで療養しに来た少年の翔に見つかってしまいます。家族から屋敷には小人が住んでいると語り継がれていた翔は、本格的に小人の家族を探しだします。網戸越しにアリエッティと初対面する翔は戸惑いますが秘密を守ろうとします。アリエッティの家族は引越しすることになりました。一方の翔も重い心臓病で入院することになります。芽生え始めたアリエッティと翔の友情はそれぞれの選んだ道を否定せずに良き思い出として心の奥に仕舞われるのでした。
不遇な人生に救いとなる少年の優しさ
キャッチコピーは『人間に見られてはいけない。』『それが床下の小人たちの掟だった。』とまるで「魔女狩り」でもあるかのようなおどろおどろしさがありますが、翔のように小人に暖かい感情を抱く人間もいるということが救いになります。
誰もが、社会人になって孤独を感じる時があるかもしれません。そんな時に昔の友人や思わぬ出会いに支えられることもあるでしょう。そういった意味でこの作品は望郷と哀愁の漂う共感できる物語になっていると思います。
豪華出演陣による美しい世界観に感嘆
ジブリアニメらしいとても解り易く暖かいストーリーが胸に沁みます。この作品に関して注目すべきは豪華な声優陣でしょう。アリエッティは志田未来さんです。神木隆之介さんや藤原竜也さん、樹木希林さんなどががっしりと脇を固めます。ジブリ映画では、初めて海外のアーティストがエンディングテーマを歌っていることにも注目です。フランス人歌手のセシル・コルベルさんが担当したテーマ曲は、ジブリアニメの世界観に見事に溶け込んでいます。
文章:Shinichiro.S