出典:© 2008 Studio Ghibli・NDHDMT
『崖の上のポニョ』は、1836年に発表された『人魚姫』をモチーフにしたファンタジーです。
監督の宮崎駿氏はベネチア映画祭で 「9歳の頃初めて読んだ文字の本がアンデルセンの人魚姫であり、そこにある『人間には魂があるが、人魚は“物”であり魂を持たない』という価値観に納得が行かなかった事が、遡ればポニョの起点なのかもしれない」と話しています。
宮崎駿監督が原作・脚本・監督のすべてを担当するのは2001年公開の『千と千尋の神隠し』以来7年ぶりになりました。歴史に残る不屈の名作です。
『崖の上のポニョ』あらすじ
『崖の上のポニョ』の主人公は魚のポニョと宗介です。まだ5歳の宗介には耕一というお父さんがいて、職業は貨物船の船長なので普段は家に帰りません。宗介はいつも母親のリサと一緒です。リサは老人ホームでガイドヘルパーの仕事をしていて、その施設は宗介の学校のすぐ隣にあるので、宗介も何度も訪れたことがあります。
ある日ポニョは生まれ故郷である沈没船を飛び出し、妹たちを置いてクラゲをかぶり冒険の旅に出ます。ポニョはいつしか宗介の家の前にたどり着きます。宗介がポニョを発見した時、ポニョはジャム缶に頭から突っ込んでいました。宗介はようやくポニョを引っ張り出し、学校の隣にある老人ホームの秘密の場所に隠します。
幼さと純粋さが目一杯感じ取れる感動のファンタジー作品です。
『人間らしい描写に心打たれる』
物語の終盤に登場する、ポニョの母グランマンマーレは、魔法使いではなく完全に神秘的な存在です。
「海の女神」として人間界と魔法界のバランスを保っています。作中ではポニョの父・フジモトとグランマンマーレの馴れ初めや、フジモトがなぜ海の時代を創造しようとしているのかは描かれていませんが、魔法がテーマになる作品が多いジブリ作品の中でも「魔法」の立ち位置が異色を放っています。
神と魔法と人間が混在する世の中で「創造」という力はどうあるべきなのでしょうか。この物語ではポニョが魔法使いになりいずれは神格化される運命を断ち、人間になろうとする姿が描かれています。宗介への想いと共に姿を変えるポニョは、いつでも純粋さを秘めています。
生まれて初めてハムを食べるシーンやリサの作ったラーメンを宗介と二人で一緒に食べるシーンなど、人間らしい描写が心に響きます。ポニョという、嵐まで呼びこんでしまう一人の少女の存在感を除けば、宮崎作品では貴重な敵のいないロマンスになっています。
洗練された純度の高い物語
『崖の上のポニョ』は極めて強く幼い命が弱き存在(人間)に生まれ変わろうとする物語です。
人間にとって守るべきは「子供達の純粋さ」というのは人間界のみならず共通の本能だと思います。
この物語はそういった意味でとても純度の高い物語だと思います。
文章:Shinichiro.S