出典:© 中村 光/講談社 ©中村 光・講談社/SYM製作委員会
原作者の中村光氏は35歳と比較的若いクリエーターです。宗教観念が薄い世代に、(宗教に詳しい)中村光氏の手によってブッダとイエスのギャグ漫画が描かれたことは、ある意味時代を象徴することでもあり、信者を取り込むのとは正反対の排他的ストーリーは1度見てみるとその世界観から抜け出せなくなります。
神々が織り成すストーリー
物語は人間のいる下界と、神々が集う天上界で巻き起こるストーリーです。オリンポス神や神道、ヒンドゥー教などの神々が次々に現れブッダやイエスと交流します。また、下界の住人との交流もあり、東京・立川市の安アパート・松田ハイツの2階の角部屋、6畳一間で二人は下界の生活を満喫しています。期間は桜の時期から年越しまでです。時代背景は世紀末からミレニアムを無事乗り越えた後という設定になっています。天然ボケの激しい2人は街を歩くだけで色々なドラマが待ち受けています。この神々の圧倒的な安心感の中にあるいたずら心と確信犯的なキャラクター性がこの物語をキュッと引き締めています。
中村光のギャグセンスに感動!
中村光作品の代表的なものに『荒川アンダーザブリッジ』という作品があります。女性の原作者であるにも関わらずウィットに富んだギャグセンスが際立つのは、逆説的にいうと女性だからこそ許容できるセンスの見せ方なのかも知れません。『荒川アンダーザブリッジ』には恋愛の要素もあり、男の子に女の子がいじられる場面も多かったのですが、今作『聖☆おにいさん』に関しては原作者の中村光氏そのものが、宗教的象徴を「お兄ちゃん達」としていじっているように見えます。イエス「ブッダの誕生日日本でスルーされすぎ問題」やブッダ「こうやって突然腹を下すと、夏が来たなって思いますね」など名言の多いこの作品を、平和の象徴として受領できる日本人の頭の柔らかさに感動します。今、日本のアニメ界の中でも最も不思議な物語の一つだと思います。
実写ドラマも必見な今作
なんとこの作品実写ドラマ化にも成功しています。イエスはあの松山ケンイチさん、ブッダは渋谷将太さんが演じています。アパートでダラダラ過ごすイエスたちの姿に観ているほうも気が抜けてしまいます。
文章:Shinichiro.S
聖☆おにいさん(17)限定版 (プレミアムKC) コミックス – 2019/7/23