世界的にも多大な評価を受けている細田守監督の代表作が「未来のミライ」です。キャッチコピーは「ボクは未来に出会った。」です。
アニー賞の長編インディペンデント作品賞を受賞した他、フロリダやリスボンおよび日本アカデミー賞受賞など数々の栄光を手にしています。
くんちゃんの約束と嫉妬
出産のため入院中のお母さんがようやく家に帰ってきて、妹の顔を見たときに主人公のくんちゃんは、「この子をくんちゃんが守る」とお母さんと約束します。この赤ちゃんがくんちゃんの妹の「ミライ」ちゃんでした。
くんちゃんは家族が増えたことに喜びを感じますが、一方で「ミライ」ちゃんに付きっきりの両親の態度に困惑します。ミライちゃんにいたずらして泣かせてしまうくんちゃんの前に成長したミライちゃんが現れます。
ファミリー向けファンタジーとしての切り込み方はアニメーション界でも屈指の豊かさを見せています。
タイムリープを繰り返すくんちゃん
くんちゃんの物語に登場するのは妹の「ミライちゃん」だけではありません。「ゆっこ」という雄の飼い犬も擬人化された形で登場します。また、お母さんの小さい頃にもタイムリープします。そして、極め付けが曾祖父の青年期でした。
青年は飛行機に乗り、馬にも乗せてくれて、最後はバイクにも乗せてくれます。生まれて初めて自転車に補助輪なしで乗ろうとしていたくんちゃんは興奮した様子でその青年に憧れます。そして、青年はお父さんにそっくりです。その青年がひいおじいちゃんだとわかったのは、くんちゃんが現実世界で古いアルバムを見たときでした。
家族でキャンプに行こうとした時、くんちゃんは駄々をこねてしまい、一度はお留守番をすることになりますが、後から後悔して家族を追いかけるために東京駅に向かいます。その最中にも、また不思議な空間にワープしてしまい「ひとりぼっちの国」に送還されそうなところを「未来のミライ」ちゃんに助けてもらいます。くんちゃんには勇気と絆が宿りました。
細田守監督のつくる「兄妹」と「家族観」
弟や妹ができて、今まで自分を照らしていたスポットライトが消えたような気がして、どこか疎外感を覚えたことは弟(妹)をもつ人は感じたことがあるのでは? と思います。この「未来のミライ」はその感情をしっかり描写しており、とても共感ができます。
また細田守監督の「家族観」が独特で賛否両論ありますが、そういった個人個人の意見や見方ができるのがこの作品の魅力だなと思いました。
文章:Shinichiro.S