原作漫画の著者は石ノ森章太郎氏です。あの『仮面ライダー』や『サイボーグ009』を描いた伝説の漫画家です。今作はジャイアンツという野球チームと二人の親子の物語を描いています。
現実のジャイアンツは『読売ジャイアンツ』として有名でありホームグラウンドの東京ドームが完成したのが1988年と、今作が生まれる1年前だったことから、宣伝効果を狙ったものとかアニバーサリー的役割として捉えられていました。
天才夢人とジャイアンツと童夢
幼い日に父親を亡くした少年・新城 童夢(しんじょう どうむ)は毎日野球漬けの日々を送っていました。父親は全ての打者を三球三振に打ち取った「81球完全試合」を達成した巨人軍のエース「新城夢人(しんじょうゆめと)」です。
天才のDNAは早くから芽吹き読売ジャイアンツにスカウトされますが、父親が死んだ理由が読売ジャイアンツによる過酷な練習環境にあったものと誤解をし、ジャイアンツを拒絶しました。しかし、母親から父の死の真相を知らされ、(父が短い野球人生を戦い抜いた)ジャイアンツでプレーすることを自分の誇りにしようと決めたのです。
昭和のスポ魂そのもののストーリー
物語としては典型的な昭和のスポ魂作品で、修行を積み重ね習得した「消える魔球」的な変化球で相手をばったばったと倒していくストーリーです。また、童夢スペシャル1号『スノーミラージュボール』という魔球を父親から継いでいて、ここぞの場面でこの魔球を使うのが大きな見どころになっています。
消える魔球に少年たちの熱量もアップ
野球をテーマにしたアニメは多くありますがこの作品は明らかに少年層を取り込む為に作られた作品であり、あわよくば家族全員を巨人ファンにしてしまおうという大胆な世界観を魅せています。
印象に残るシーンは東京ドームの天井近くまで上り再び打者の前に降りてくる魔球で、キャプテン翼のドライブシュートにも似た魔球です。
筆者も当時まだ小学生でこのアニメを見ていましたが違うチームのファンとして、決して嫌味もなく勇気を与えられる作品だった思い出があります。石ノ森章太郎×ジャイアンツのネームバリューだけでも注目したい作品の一つです。
リアリズムと非現実性
札幌出身の筆者として嬉しいことに北海道シリーズで札幌円山球場が登場しています。終始リアリズムを貫いていますが、逆に童夢くんの特訓方法についてはほぼあり得ない描写が続きます。指を鍛えるために砂の入った壺に指差しを続け、結果突き指になるが、その指はネクストレベルに到達する、といった感じです。
また実戦でも300キロのストレートや打者の手元でブラックホールを作り出す魔球など、やはり現実乖離した描写が満載です。すべての野球ファンにとって興味の対象となる作品だと思います。石ノ森章太郎作品の他では見られない一面を見られる作品としても貴重なアニメだと思います。
そして、この作品では『読売巨人ジャイアンツ』というチーム名が具体的に出され童夢をスカウトした江川卓や中畑清の名前も登場します。
文章:Shinichiro.S