出典:©ADK
2019年7月 – 10月にリバイバルヒットを記録した日本アニメーション界のクラシック的な作品です。
原作は1968年から1969年にかけて全26話で構成されており、この作品はモンスターがモンスターであることの苦悩を描いており、その飛躍した設定に消極的な視線をおくる視聴者もいる中、ピュアな子供達のハートを鷲掴みにしました。
哀愁漂う作品
妖怪人間が闇のヒーローとして描かれる設定には、特撮映画『ゴジラ』などから受けたインスピレーションを感じさせられるものでもあり、昭和の日本らしさが美しく表現されていると思います。
基本的に1話完結で「人間になりたい」という想いを抱えながら、闇に棲む妖怪達を倒していくストーリーです。「愛」にも通ずる「哀愁」漂う作品であり、子供達に、当時の日本の豊かさは心によって支えられていることを丁寧に伝えたことでしょう。
人造生物の苦悩を描く
自分がモンスターであることを卑下し人間への憧れを抱きながら自尊心を奮い立たせようと、必死に人間の敵を倒していくストーリーは、のちの『ワンピース』に出てくるチョッパーの物語が思い起こさせます。
もしかすると『ワンピース』の尾田 栄一郎さんは『ベム』に深い敬愛を示したものかもしれません。
未来の人間の罪深さを「モンスター」という媒体に吹き込む重要なメッセージ
ハンデを背負って生まれてきたにも関わらず、尊厳を持って勇敢に戦う姿は感動を呼びます。モンスターと一言に言ってもベムは人造生物であり、「人間が創り出した」というジレンマがあります。この作品は日本と韓国で放送されたものです。韓国のアート作品には『愛』を表現するのに長けた、表現力の鋭さのようなものがあると思います。
韓国の人たちはこの作品を見てどんな感性の揺らぎを見せてくれるのでしょう。そしてもちろん日本人の心がどう揺らぎ、何を感じるのかも考えなくてはなりません。
ベムの特殊能力
ベムには様々な特殊能力があり、死者を一定時間内であれば蘇らす力というのがあります。瞬間移動や妖術も使います。妖術とは何もない空間から突然ベムの手や頭が出現するものであり、その恐怖で一度仮死状態になった人間は悪の思考を除去され、心が浄化される、と言った能力があります。
最強の助っ人となったベムと恩恵を受けている人間はその距離を縮めることができるのでしょうか。
フランケンシュタインからチョッパーまで
人間のエゴにより人体実験の道具にされ未完のまま産み落とされ、しかし、肝心の博士の死によりどうにもならず世の中を彷徨い続けなければならない運命を背負うという展開はモンスターものの王道といえるストーリーだと思います。
現実世界でも大抵の人にはコンプレックスがあると思います。なぜハンデを背負って生きていかなければならないのか、ホクロの位置から先天性の難病まで人間にだって必ず一生付き合わなければならない欠点があるのです。そういった困難は子供の頃にはあまり感じるものではないかもしれません。しかし、大人になった時にこのような作品と出会えていたことが、自己の慰めになり、また、吹っ切る力になるのではないかと思います。
文章:Shinichiro.S