出典:©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
深夜アニメが好きな人なら知らない人はいないであろう『化物語』の原点になります。
『化物語』で主人公だった阿良々木暦(あららぎこよみ)が吸血鬼になるという相変わらずの視聴者を弄ぶような展開は突飛ではありますが、期待通りの裏切りと言ったところでしょう。
物語は三角関係
物語の成り行きは極めてシンプルで主人公の阿良々木暦(あららぎ こよみ)がキスショットという吸血鬼に血を吸われ、人間でありながら吸血鬼になってしまう物語です。
暦には同級生である羽川翼(はねかわ つばさ)というガールフレンドがいます。キスショットと暦の関係の間には『化物語』でも登場した忍野メメ(おしの めめ)という謎の男がいます。
キスショットは吸血鬼にも関わらず、暦を救うために昼間の太陽光線を浴びて幼体化してしまいます。暦は自らの運命を受け入れ3人の吸血鬼ハンターを倒します。翼とキスショット、そして暦の三角関係は物語の終盤まで続き化物語のファンも納得するであろう非情なクライマックスを迎えます。
オリジナルキャラクターも魅力的
暦が倒した3人の吸血鬼ハンターはキスショットの四肢を奪い瀕死の状態に追い込んだ者達です。キスショットは愛らしく、更に幼体化した姿も魅力的な女性です。彼女は自分の命を人並みに大切にするタイプではありません。吸血鬼であることに不満を抱いているようにも見えます。人間でありながら吸血鬼体質な暦との交流がしおらしくうつります。
ワキとシテによる大人なストーリー展開が魅力
今作の他に『化物語』でも『終物語』でも登場した忍野メメという人物が物語全体のユーモアをギュッと引き締めてくれます。金髪に顎髭もブリーチされていて、でかいピアスが目立つ中年の男性はいつも冷静で道化というか、道先案内人のような役割を果たします。
物語シリーズのファンであれば見逃してはいけない重要な作品
2016年から2017年にかけてそれぞれ60分ほどの上映時間を3部作で構成されてアニメーション映画として公開されたこの作品。阿良々木暦の顛末を表現しているという意味でも重要な作品になっています。
物語シリーズを見ている人でも、見ていない人でも楽しめる良作となっています。
ファンを魅了するキスショット
キスショットの凛とした姿が印象的な物語です。「近付き難い雰囲気で尚且つ吸血鬼」という設定は歪んだ見方かもしれませんが、ツンデレと表現すべきではないのでしょうか‥?
ファンの一人としてはどうにも「恋愛対象」としてしか見れないのは、制作陣の思う壺かもしれません。言い方によっては(現実乖離した)理想的な女性像が描かれているのかもしれません。
意外な時系列
今までこのコラムを見てきて阿良々木暦がついに散ったのだな、と思う人もいるかもしれませんが、正確な時系列で表すと『傷物語』は、化物語より前、物語シリーズの一番最初の物語になっています。暦は『傷物語』の後に不死身に近い状態にまで昇華していて、その後のストーリーを複雑怪奇なものにしています。
最初の物語『傷物語』
物語シリーズをコレクションして本格的に深く掘り下げたいと思っている人には、先ずその世界観の原点である『傷物語』を見て欲しいと思います。
文章:Shinichiro.S