出典:©甘党・KADOKAWA/となりの吸血鬼さん製作委員会
ある夜のことだった。
いつものように森の中を散歩していると、一人の迷子の女の子と出会ったんだ。
彼女は名を天野灯(あまの あかり)という。
灯を空を飛んで送り届けてやると、いたく気に入られてしまってな。
こうして、洋館で一人暮らしのわたしに同居人ができたんだ。
自己紹介が遅れたな、わたしはトワイライト・ソフィーと言う。
吸血鬼だ。
年齢は360歳だ。
普段は340歳だと、20歳ほどサバ読んでいるのは内緒で頼む。
灯から聞いたんだが、あの森には生きた人形が出没するという怪談話があるという。
怖いじゃないか、わたしはそういうのは苦手なんだ。
今度から夜の散歩コースを変えよう。
吸血鬼のわたしに何か聞きたいことはないか?
食事は?食事は?
吸血鬼の食事は当然、血液だ。
通販で買っているぞ。
一応料理というものに挑戦してみたんだが、どういうわけか味がしなかった。
調理器具はしばらく持ち腐れになっていたのだが、灯たちが使っているぞ。
捨てなくてよかった。
おしゃれは?おしゃれは?
おしゃれには一応気を使っているぞ。
でも鏡に姿が映らないから、自分でどうなっているかわからないんだ。
そのへんは、灯がいてくれて助かっている。
顔にいたずら書きとかされていても、気づきようがないんだがな。
まあ、夜になれば吸血鬼になった時の姿に勝手に戻ってしまうんだ。
お風呂は?お風呂は?
流水は苦手なのだが、風呂には入るぞ。
シャワー程度なら大丈夫だ。
普段は?普段は?
昼間はだいたい眠っていて、夜は健康のため散歩に出かける。
それ以外はパソコンでインターネットをして時間を潰している。
バカンスにはたまに行くぞ。
マリー・アントワネットの処刑を見物したり、新大陸へ観光したこともあるんだ。
灯によって眠っている間にカバンに詰め込まれて、真夏の海に連れていかれたときは灰になるかと思ったが。
家族は?家族は?
家族はみんな普通の人間だった。
なので、とっくに死別している。
吸血鬼の友達はいるぞ。
名をエリーという。
特殊な金銭感覚の持ち主でな、よく金の延べ棒を持ち歩いている。
なぜか金持ちなんだ。
もし君が吸血鬼になりたいと言うのなら、全盛期がいいぞ。
「もっと胸が成長してからなりたかった」
「腰とか膝とか体にガタが来る前になりたかった」
とか言っている吸血鬼がいるのでな。
どうだ?参考になったかい?
文章:百百太郎