出典:© 藤田和日郎・小学館/うしおととら製作委員会
この作品の原作が発表されたのが1990年なのでテレビアニメの放送開始(2015年)まで長く放置されていたものだということがわかります。そのため自然とサブカルチャーの分類に分けられることが多かったのですが、原作の累計発行部数は3000万部を突破しています。
日本のメディア芸術100選マンガ部門選出(週刊少年サンデー連載作品で唯一の受賞)も快挙だと思います。
獣の槍
主人公は蒼月潮(あおつきうしお)中学2年生。普通に過ごしていた日々もあっけなく終了します。自宅の庭の蔵の中に化け物を見つけ会話してしまったのです。もうこの時点でうしおの人生は決まったようなものです。その化け物の名は「トラ」。どうも話を聞くうちに対妖魔用の槍で500年もの長い間封印されていたのだそうです。
初めは、触れてはいけない封印だと見た目で悟っていたうしおですが、家族に脅威が向けられるにつき、うしおはトラに助けを求めます。妖怪との戦いは二人の絆を深め、伝説のトラは再び妖魔の世界に降臨するのでした。
カオスとの戦い
獣の槍には意思はないはずです。ですが、最終的に獣の槍が、あのトラを長い間封印していた槍が二人と世界を救ってくれます。ワンピースの幻の船の大工を見ているようで何とも感動的なシーンでした。うしおとトラは「カオス(混沌)」と名付けるにふさわしい世界を一身に切り裂き、世界を妖怪の脅威から引き剥がそうと飛び回ります。
このトラというヒーローを見るにつけ、岩に500年間閉じ込められていた孫悟空を思い出します。確かに世界観は似ているかもしれませんが、原作者藤田 和日郎(ふじた かずひろ)氏の手にかかれば圧倒的なオリジナリティーになります。日本の妖魔の世界をこれほどに壮大に描くことができる人間はそうそういないだろうと思います。
まとめ
日本の90年代のサブカルチャーのハシリとなった今作は特に青春期を迎えている読者層に人気を博しました。トラとの出会いからうしおの生活は一変し、また、二人の関係も徐々に深いものへと展開していきます。
劇画的タッチで描かれる作風は荒々しいのですが、でも、胸にスッと落とし込める明快さを持っています。
原作者の藤田氏はモンキーパンチや山田風太郎に強い影響を受けているようで、ファンタジスタ的な展開力はそのあたりから湧き上がっているものなのかなと思います。何はともあれ、日本文化の継承が着々と進んでいることに安堵する今日この頃です。
文章:Shinichiro.S