©山田ヒツジ・講談社/デキる猫は今日も憂鬱製作委員会
公園で拾った仔猫が、すっかり大きくなりました。
酔っ払いOL福澤 幸来(ふくざわ さく)に連れてこられた部屋は、ゴミに占領され、寝る場所もない。
そんなところに猫の居場所などあろうはずがない。
朝には立ち去るつもりが、「一宿一飯の恩」でゴミ出しを始めたら・・・なかなか終わらない。さらに管理人に「ゴミの日を守れ!カラスでも理解しとるわい!」とプライドを傷付けられる始末。
出ていくタイミングを失って、そのまま居付いて3年が経ったのです。
ゴミが片付いて、部屋は広くなったものの・・・
熊か?ニュータイプか?「諭吉」と名付けた猫との生活は、至れり尽くせりではあるが、気づけば2m級にまで成長したこととは別に、どこか窮屈さを感じる。
巨大猫・諭吉には隠している真の狙いがある!
一緒に寝る
先にベッドに潜り込んで寝床をポンポンして誘うと、素直に応じる幸来。
諭吉のモフモフが気持ちいいという。
なかなか起きない時は、覆いかぶさっても文句言われない。
幸来のほうが、それを狙ってわざと起きないのかもしれない。
顔に前足を当てる
日曜の夕方アニメが始まった途端、
「月曜が来る!満員電車イヤァ!仕事イヤァ!」幸来が錯乱する。
彼女を鎮められるのは諭吉だけ。
そんな時は、肉球の匂いを嗅がせると、落ち着くという。
仕事にはきっちり行ってもらわねばならない。
人に近づけなくする
毎日手作り弁当を楽しみにしているのは幸来だけではない。
職場でも注目の的だ。
毎回見事なお弁当に同僚たちには、すっかり幸来がデキる女だと思われている。
一緒に暮らしている巨大猫が毎朝早起きして作っている、なんて口が裂けても言えない幸来は、他人との距離を置くようになる。
諭吉と名付けられた猫は、かつて自分が拾われた公園へ、酔いつぶれた幸来を拾いに行く。
主の身の回りの世話や体調管理をしながら、きっちり働きに出てもらって、周辺の人とは付かず離れずの状態にする・・・
要するに、住居と食を確保しつつ、幸せを求めさせない。
こういうのを「生かさず、殺さず」と言います。
主にあれこれ注文をつける様子は、言わば「注文の多い料理店」の山猫。
対して、何を指示しようとも、融通の利かない主。
それでも猫缶に飽きないうちは、諭吉が幸来を食べることはないでしょう。
文章:ヒトツメロバ