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俺は金室慎之介（かなむろ しんのすけ）。夢はミュージシャン。

高校卒業したら、相生あかね（あいおい　あかね）と一緒に東京へ行く約束をしてたんだが、あかねの両親が死んじまって出来なくなっちまった。

いつもギターの練習場所にしている稲荷神社のお堂で黄昏ていたら、いきなりでかい音で叩き起こされた、と思ったら13年後の世界に飛ばされてた。

こっちの世界の31歳のあかねはまだ未婚だという。

ミュージシャンになっているこっちの世界の俺とくっつけるよう、18歳の俺が何とかしてやんねえとな。

ところが俺は生霊で地縛霊というポジションらしく、神社のお堂から出らんねえんだわ。

31歳の俺は演歌歌手のバックバンドという立場に引け目を感じているらしく、あかねに近づこうとしないんだと。

あかねの妹あおいに一肌脱いでもらうか。

事件が起きた

あかねが落とし物を探して山のトンネルへ向かった。そこに地震が発生して土砂崩れが起きたという情報だ。あかねとは連絡が取れない。あかねのピンチだ。

それでもあかねに近づこうとしない31歳の俺に見切りをつけたあおいは、あかねを助けるために俺を連れ出そうとする。

13年前、俺はお堂にギターを置いたまま、東京へ旅立ったんだが、あおいに強引に引っ張り出された途端、そのギターがぶっ壊れた。

どうやら俺はお堂ではなく、ギターに地縛していたようだ。

何故か空を飛んだんだ

俺とあおいは空をすっ飛んでトンネルへ向かった。

ほんとうにふたりは空を飛んだんだ。傍から見たらフライングヒューマノイドだ。

トンネルではあかねがいた。

土砂崩れは起きていたが、トンネルを塞ぐほどのものではなく一安心だ。

31歳の俺も遅れて駆け付けてきた。

ほんっとに遅ええよ。

帰りの車を拒否するあおい

そうか、おそらく31歳の俺とあかねの二人きりにしたかったのだろう。

その事に気付いた俺も気を利かせ、お役御免とばかり姿を消したのさ。

どうだ？夢を叶えたとはいえ31歳のしょぼくれた俺より、未来に目を輝かせる18歳の俺のほうがイケてるだろ？

一方、車に乗らなかったその後のあおいがどうなったかというと･･･

どうやら自分の能力で空を飛んだと誤認していたようで、手をばたつかせ空に向かって飛び跳ねては、首を傾げてため息をついてた。

文章：ヒトツメロバ