出典:(C)武論尊・原哲夫/NSP・東映アニメーション 1987, 版権許諾証TH-116
原作者の武論尊氏は1972年には週刊少年ジャンプにデビューした少年漫画界のレジェンドです。
その画風は劇画的でありながらスポーティーであり、当時の文化にも大きく影響を与えました。しかし、この『北斗の拳』を実際に立案したのは週刊ジャンプを刊行している集英社の編集員・堀江信彦という人物です。つまりは武論尊氏はアイデアマンというより職人、仕事人だったということでしょうか!?でも随所に見られるユーモアは間違いなく原作者のセンスだと思います。
『北斗の拳』然り『ワンパンマン 』然り、日本のアニメーションの魂は男の心を描くのに優れているなと感心しています。
愛のために
舞台は199x年に核戦争になって荒廃しきった世界です。武論尊氏の意図するところでは世紀末を一つの歴史の区切りにしたいという思いがあったかもしれません。伝説の暗殺術「北斗神拳」を操り無法地帯を静め大切な人を守るために戦い続ける一人の男の物語です。
主人公ケンシロウの胸には七つの傷があります。その傷を作ったのは南斗六聖拳の一人・シンという男です。ケンシロウとシンの間にはユリアという一人の女性が関係しており、ユリアはケンシロウと結婚の誓いをしますがシンはケンシロウを破り胸に七つの傷を負わせ、極悪組織を立ち上げサザンクロスという名の街をユリアの為だけに建設しました。しかし、ユリアの心は動かず再決着をつけようとシンとケンシロウは再戦しますが結果はケンシロウの勝利、そしてシンは自ら死を選びます。
制作サイドは意外とラフ
『お前はもう死んでいる』という決め台詞はあまりにも有名です。身体中の秘孔をつくことにより相手を内部から破壊する北斗神拳は相手への攻撃から崩壊までの間にタイムラグがあるのです。当時の子供(視聴者)たちも不思議とその理屈を飲み込んでおりテレビの前で興奮したのを覚えています。
世界観やリスクというものを想像できない子供だからこそ興奮できたのかもしれません。因みに「ホアタァッ!」という決め台詞は「終わった」という意味なのだそうです。さらに「お前はもう死んでいる」と言ったのは全152話中1、2回に過ぎないこともわかりました。意外な真実も明らかになりましたが、それでも尚男心に火をつける上質な作品なのだと思います。
まとめ
世界の困窮と愛をテーマに物語は進みます。確たるドラマ性が成り立っており、ラオウとのストーリーなどはフィクションとして抜群のセンスを見せています。黒王号という戦闘用の馬のカッコ良さもアピールポイントです。
人から人へ伝えられ心に残る情報というのは限られているかもしれませんが、この作品は多くのファンの記憶の片隅から離れられないでいるのではないでしょうか。
文章:Shinichiro.S