2019年の代表作『きみと、波にのれたら』は上海国際映画祭で上海国際映画祭コンペティション部門最優秀アニメーション作品賞に輝いています。湯浅監督は『デビルマン Cry Baby』なども手がけており,幅広い層に人気があります。
作品紹介
2019年 『きみと、波にのれたら』
2019年 『S U P E R S H I R O』
2018年 『D E V I L M A N Cry Baby』
2017年 『夜は短し歩けよ乙女』
2017年 『夜明け告げるルーのうた』
2014年 『ピンポン THE ANIMATION』
2013年 『Kick-Heart』
独特のデザインセンスで人気を集めているこの監督は、デザイナーという表現がピッタリくる監督です。中でも『夜は短し歩けよ乙女』などは本格的にアートの様相を魅せており、アニメーションの支持者以外にも幅広く影響を与え、また、支持基盤を拡大させた原因でもあります。何かを発信する力に長けた人なのだという印象を持ちます。確たるテーマ性と、スタイルとしての優しさが伝わってくる貴重なアニメーターだと感じています。
下積みから代表的クリエーターへの変貌
90年から92年にかけて、T Vアニメ『ちびまる子ちゃん』の作画担当の職についた時から既に業界では存在感を示していました。のちに、クレヨンしんちゃんなどで作画監督・原画を手掛けたこともその後のキャリアに大きく貢献していると思います。視聴者が共感できる作品づくりの原点は下積み時代にあるのかもしれません。
『夜は短し歩けよ乙女』
ネットでは「天才」と騒がれていますが、筆者の感想としても、この人はやはり天才的なアーティストだと思います。こうしてコラムを書く中で「天才」としてその称号を発信できることを嬉しく思います。この才能を決定づけた作品が、日本アカデミー賞最優秀アニメーション賞『夜は短し歩けよ乙女』だと思います。ストーリーはサマーウォーズ のような一つの街のカオス(混沌)と出逢う中で最終的にギャンブル的な展開でクライマックスを迎えるというものです。湯浅政明監督が夜は『短し歩けよ乙女』の原作に魅せられた理由は恐らく舞台が京都であり、世界観が日本神話的であり、ストーリーの展開が序破急(じょはきゅう)という手法で書かれている点だと思います。
『夜明けを告げるルーのうた』
舞台はとある漁港、中学生のカイが人魚の少女・ルーと出会い交流を深める作品です。どこかしら、『崖の上のポニョ』を思わせる作品です。『ポニョ』が2008年で『ルー』が2017年の作品なので、幾らか影響を受けている可能性もあると思います。またルーは人魚なので陸の上でも水のオーラが身を守っている、という設定があります。これは、のちに公開された『きみと、波にのれたら』にも影響を与えていると思います。このように湯浅政明監督作品は絵的にリンクしている部分が多くあり、ファンの興味心を駆り立てるユーモアセンスが何気なく織り込まれています。
飛び抜けて一般層の認知度の高い監督ではありませんが、隠れた名作を次々に世に送り出している名監督だと思います。このコラムを読んで湯浅政明ファンが増えることを楽しみにしています。
文章:Shinichiro.S