『マトリックス リローデッド』と『マトリックス レボリューションズ』という2つの続編の脚本と監督を務めた「ウォシャウスキー兄弟」が手掛けた今作『アニマトリックス』は、日本のアニメーション映画『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』に対する兄弟のリスペクトも表現された、奇抜な短編アニメーションです。二人のネームバリューは今作をきっかけに一気に上昇しました。
アメリカンカルチャーと「和」の融合
作中、『実写版マトリックス』とは打って変わって忍者や侍、歌舞伎などの要素がふんだんに盛り込まれており、和の要素が強い作品という印象があります。描画もやはり日本アニメの影響が強くみられます。
マトリックスの世界観の補足とリローデッドへ繋ぐストーリーが描かれており、アニメならではの見どころ満載のストーリーになっています。『プログラム Program』というサブタイトルで発表されたストーリーでは白い女武者姿のザイオンの戦士シズと、黒き男武者姿の戦士デュオが抗戦するなど日本人として、感動するほどの美しい描写を見ることができます。
世界のバーチャル化に警鐘を鳴らす作品
マトリックスの登場人物キッドが、仮想世界から現実世界に引き戻されるまで、の物語が1話丸ごと使って描かれています。『マトリックス』の世界ではこれが大きなリスクとして描かれており、しかし、未来のありようとすればこれは何より優先され、解決されるべき重要な問題だと思います。
「夢のような現象」から人々が上手く、安心して、目を覚ませるような未来が待っていることを願います。同じようなテーマのアニメ映画には日本の長編アニメーション映画の『パプリカ 』があります。
マトリックスの神秘は生命の誕生まで遡る
宇宙が何らかの暗号により意図的に管理されているものだとして、人間にとって、仮想空間を有効利用することは「進歩」なのかもしれませんが、宇宙の神事としては、この人間にとってのリスクはある種の負担になるのかもしれません。
人間のエゴが仮想空間に介入する時、人間の進化の段階は第2ステージに上がることになるのでしょうか。
現代という時代を象徴する作品
世界観が未知の領域だということは『マトリックス』でも『アニマトリックス 』でもはっきりと書かれているので、私たちの未来の生活のあり方を考えさせる作品になっていて、日本アニメ『攻殻機動隊』へのアンサー的役割にもなっているのかもしれません。
とにかく、現代人の生き残る道への興味を沸き立たせ、歴史のある時点における観念を決定的に位置付けた記念すべき作品だと思います
日本アニメーションの実力が最大限尊重されたプロジェクト
このアニメーションには日本のアニメーション作家が多数参加しており、日本人ならではのデザイン、モデリング、スピーディーな展開がとても興味深く、独特な世界観を構築しています。
日本とアメリカの共同で創作された上質なアニメーションストーリーを見られる数少ない機会だと思います。是非一度チェックしてみてください。
文章:Shinichiro.S