出典:ⓒ小林よしのり/小学館・シンエイ
原作者の小林よしのり氏はのちに『ゴーマニズム宣言』などで一躍人気作家になり、更に日本中を巻き込むムーブメントを牽引する役割を担いました。
政治や歴史に関するゴーマニズムを説く形で政治的にも大きな影響を与え、刻の人となった小林氏は、「平成の小林よしのり」と呼ばれるほど象徴的な人物になりました。
大富豪の学校生活
御坊茶魔(おぼっちゃまくん)の家は世界有数の財閥であり、ガイドがいないと家の敷地で遭難してしまうほどの大富豪です。第999代目当主にあたる御曹司が茶魔です。時にソ連やアメリカをも動かすと言われる御坊家の後取りは、複数匹の亀に乗って移動します。そして、いつかの日にも亀に乗って田園調布学園に転向していくのでした。「そんなバナナ」「すみま千円」「おはヨーグルト」などのギャグを武器に同級生との学生生活を穏便に、かつ大胆に謳歌する物語です。
原作者は日本を代表する社会的批評家
『ゴーマニズム宣言』と『おぼっちゃまくん』のギャップには凄まじいものがあります。そもそも出版社がよくこのギャップを許したなと思います。
批評し、批判されることの多い小林氏ですが、作家としての体力は相当なもので、阿修羅の如くいろいろな要素を抱えた顔をメディアに見せてくれることが多いです。
あまりにも普通な環境と気持ちがいいほどの主人公の設定に注目
さて、『おぼっちゃまくん』の本編ですが、好きな子に「いいなけつ= いいなづけの意」をくらわしたり、気に入った友人を見つけると自らの性器に友人の手を導き、「ともだちんこ」を絶叫するなどの奇行が目立ちます。
評価は千差万別
こんなくだらない作風でも1989年に第34回小学館漫画賞児童向けを受賞しているんです。一方、アニメ版は日本PTA全国協議会の「子供に見せたくない番組」の常に上位にいました。我が家では家族共々観ていましたが‥。
バブルの崩壊の後に貧富の差が激しくなり、差別的風潮が見られる様になった時期だったと思います。家庭が差別意識の殻を破り富に感謝を感じるための一つのメディアツールとしてこの作品の本質は評価に値するものだったのでしょう。
おぼっちゃまくんが転校をきっかけにつかんだわずかな変化
基本的にストーリーの流れに感動的なシーンは見られずひたすらにおぼっちゃまくんのわがままな振る舞いが展開していくだけなのですが、柿野修平が御坊茶魔にとってお金と関係なく付き合える初めての友達になったことから、いわゆる一般的な感覚というものと触れ合うきっかけができたようです。
最後の最後まで腹の奥深くから笑いがこみ上げてくるこの作品を一度チェックしてみては如何でしょう。
『おぼっちゃまくんは日本文化の柱』
ギャグアニメ自体が衰退している様に感じる今日この頃ですが、『クレヨンしんちゃん』がかろうじて孤軍奮闘している今日この頃です。
ギャグアニメというのは意外にその国の文化の重要な柱になりうる物だと思います。日本なりのユーモアの火を絶やすことなく受け継ぐ作品が描かれる未来を見守りたいと思います。
文章:Shinichiro.S