この作品はライトノベル作家の時雨沢恵一氏の小説が先行して2003年にアニメ化されたものでWOWOWで放送されました。1話完結のロードムービーですが、主人公のキャラクター性が強く小説版とはまた違った魅力のあるアニメになっています。
バイクで旅をするキノ
『キノの旅』第1話から「人を殺しても裁かれない国」というのが出てきます。自衛の為に人を殺すのが罪ではないが殺人が許されているわけではないといいます。この瞬間にこの物語が世界中に蔓延する社会問題を題材にした物語だということがわかります。基本的に1話完結で、テーマは飛躍的なものが多いと思います。キノの相棒のモトラドというバイクは「エルメス」と名付けられています。視聴者層は小学生から高校生とされていますが、大人の心も癒してくれる暖かいストーリーになっています。
旅する伝道師
印象としては、やはりアドベンチャーというよりロードムービーです。女の子は12歳を迎えると同時に大人になるための手術をする国というのが出てきます。このようなエピソードを観ていくとキノという人物が「旅する伝道師」のようにも見えてきます。女の子に「手術を受けることが大人になることじゃない」と説得したキノは両親の反感をかった女の子の身代わりに刺されてしまいます。
多文化交流に見るキノの存在意義とは
1話1話が鑑賞者の深層心理に足跡を残し、グローバルという波を克明に表現します。他国を土足で踏み荒す「移動する国」のエピソードでは、キノにとっては「迷惑な国」と映ったようです。人が支配する前の地球の論理のようで、しかし、自分が生き残る為に他国を攻撃するような野蛮さはありません。科学的にも優れており、知的な国民が多いのです。ただ生きる国を「巣」と捉えているだけで‥。
文章:Shinichiro.S