第40回(平成6年度)小学館漫画賞受賞作品である原作は羅川真里茂氏の手によって描かれました。少女漫画ではありますが漫画好きであれば男の子でも知っていた人は多いでしょう。母親を交通事故で亡くした少年とお父さんの日々の葛藤を描いた感動作です。
『赤ちゃんと僕』あらすじ
父・榎木晴美にはまだ小学5年生の拓也と赤ちゃんの実(みのる)がいます。母親の由加子を交通事故で亡くしたばかりの3人はその事実を必死に胸に収めようとします。たまに感じる寂しさも、無邪気なみのるの姿を見れば吹っ飛んでしまいます。
じきに昼間にみのるの面倒を見続けてきた拓也は父性を覚えることになります。一方の晴美は、「こんな時…母親の存在の大きさを痛感するよ…。父親なんて…」と嘆きながらも常に優しく息子二人を気遣います。3人のほのぼのとしたやりとりが一つの物語としてゆっくりと心に染みわたる作品です。
『父親の愛情表現に注目!』
父親の偉大さと長男の思春期に生まれる父性がこの物語の世界観を大きく膨らましています。そして優しさに包まれる様に描かれています。画風こそ、一昔前の少女漫画らしい赤ちゃんの目がキラキラ光るインパクトのあるものですが、この作品の見どころは赤ちゃんならではの遊び心と父親のストレートな愛情にあると思います。
そして、赤ちゃんのみのるの拓也に対する愛情も半端ないです。父子家庭の物語ですがこの作品は女性作家だからこそ描けた作品ではないかと思います。ある日実は母親と同じ様に事故に巻き込まれて生死の境を体験することになります。
なぜこんなにも愛情に恵まれている家族に2度も不幸が訪れるのかとやるせない気持ちにもなりましたが、少女漫画にはよくあることで、失わなければわからない家族の大切さ、今まで見えていなかった支え、が見えてくるものでこういった展開から人生を学ぶこともあるのだなと思いました。
文章:Shinichiro.S