出典:©賀来ゆうじ/集英社・ツインエンジン・MAPPA
あったら嫌な路線バス。「降車ボタンが車両内に一つしかなく、しかもめっちゃ押しづらい場所」(挨拶)。
と、いうわけで、フジカワです。
これを書いている今現在は、五月になったばかりなんですけども、脳内にはまだ正月の記憶が残っているあたりに、いかんともしがたい年齢を感じる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回の記事は、「『地獄楽』の第三話を観たぜ!!」とかいった話です。
あらすじ!
死罪を逃れる条件として、「不老不死の仙薬」を求め、極楽浄土の地へ上陸する、画眉丸と佐切。
その地は、季節を無視した花々が咲き乱れ、怪しく不気味な生物がはびこる、謎の島だった。上陸早々、同目的の他の死罪人が襲いかかってくる……。
カッ飛んでるぜ!
今話は、まず、石隠れの長が殺されんとしているシーンから始まります。が、何をどうしようが、長は死なない。
頭を刃物で貫かれようが、ハラワタがこぼれ落ちようが、まるで平気。
種明かしは、長が「不老不死の仙薬」を飲んだから、とのこと。つまり、「薬自体は存在する。だが、この島にあるかは知らん」と、画眉丸の曰く。
長のチートぶりを見せつけることで、説得力を持たせています。
そして、その上陸した島ってのが、またカッ飛んでいる。
一見、様々な花が咲き乱れる美しいところなんですが、季節を無視している。おまけに、人面蝶やら、明らかにグロいクリーチャーがうじゃうじゃいる。
実際、これは前話で触れられているのですが、調査のために上陸した幕府の役人のうち、唯一の生き残りは、身体から花を咲かせて、廃人になっている。どんな環境だ。魔界かよ。
みどころ!
ぱっと見は、他の死罪人とのバトル。画眉丸の常軌を逸した強さが、また見られます。なんせ、死罪人、要は凶悪犯罪者連中です。世間一般的な常識が通用するはずがない。
彼らの中での「優先順位」は、「まず、他の競争相手を排除して、後から仙薬探しをする」こと。十人が島に上陸したわけですが、早くも潰し合いを始めている。
やるかやられるか。なんなら監視役の山田朝ェ門を丸め込もうとして、逆に首をはねられる奴までいる。
同様の理由で、画眉丸も襲撃を受けます。武蔵坊弁慶ライクな、巨漢の武器マニア。
画眉丸としては、「妻が悲しむ」という理由で、殺生には消極的なのですが、「仕方ない、殺すか」の言葉でいったんスイッチが入れば、無敵モード発動。
あっさりと返り討ちにします。
冒頭で出てきた長もチートなら、画眉丸もしかり。爽快感があります。
真のみどころ!
どっこい、それは上っ面。真の見どころは、画眉丸と佐切の対決です。画眉丸もまた「優先順位」を明確にすべく、佐切に襲いかかります。
激しい戦闘。でも、両者共に「ためらい」がある。冷徹になりきれない。
佐切も当初は、「やはりこの男は罪人だ」と思い、殺すべきだと考えます。が、揺らぐ。
前話で自分の心を動かしてくれた画眉丸の中に、「情」を見ます。
剣戟を交わした末、画眉丸が佐切を押さえ、後はトドメを……という所まで来るのですが、画眉丸は、トドメが刺せない。手が動かない。
それまで彼に憑いていた長の幻影を、妻のそれが打ち消していきます。この演出が素晴らしい。
彼は、妻の言葉を思い出します。「情を貫くのが、真の武勇」。妻との出会いで「情」に目覚めた画眉丸は、やはり、佐切にトドメが刺せない。
「わしは、ここまで弱くなったのか」と涙を流す画眉丸ですが、その涙こそ、「情=人間らしさ」の証。
その「迷いの心」を読んだ佐切は、自身も画眉丸によって己の「情」と向き合えるようになったのを思いだし、「それは弱さではなく、強さの種」と言います。
そして、そっと刀のさやを刃にあてがい、刀身を納めていく。
佐切はさらに言います。「(死罪人と監視役という)立場は変わらない。でも、あなたが人生を取り戻すのを、見届けさせてほしい」。
そして、「もう、あなたは以前のあなたではない」と、佐切。妻の言葉とも重なり、画眉丸が「気付いた」ところで、カチリと音を立てて、刀が全部納まる。美しい。
その後、画眉丸達もクリーチャーに襲われるところで、次回への引き。巧い。
まとめ!
ってことで、まとめます。
なんだか、「無罪放免になるための仙薬探し」というのが、「タテマエ」に思えますね。つうか、実際そうでしょう。
話のキモは、「画眉丸と佐切が、自らの『情』に向き合い、成長し(人生を取り戻し)ていく」事かと。もっとも、この見方が「正解」なのかどうかは、まだ分からんのですが。
確実なのは、佐切は「ヒロイン」ではなく、「もう一人の主人公」だってことですね。これに異論のある方も、そういらっしゃらないかと。
佐切可愛いよ佐切(またか)。
んじゃまた。
文章:フジカワ