出典:©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
中国のシンをめぐる戦いを描いたベストセラー『キングダム』と人気を二分した作品が、この『ゴールデンカムイ』です。基本的にはアイヌの女の子と帰還兵の軍人が二人で北海道の地を冒険する的な物語です。
劇中には多くのアイヌ語が飛び交っており、学ぶところの多い作品です。カムイはアイヌ語で神様、ゴールデンは、二人が冒険するきっかけとなった砂金を示しています。
アイヌと英雄
部隊は小樽、主人公は日露戦争の英雄・杉元佐一(すぎもとさいち)といいます。そしてヒロインのアイヌの女の子がアリシパといいます。杉元は、ゴールドラッシュがすぎた季節に戦争から戻って来て、砂金掘りに苦戦していたのですが、熊に襲われ、それを救ったのがアリシパさんでした。
佐一は「かつて、大量の金を所有していたアイヌの氏族を皆殺しにし、金塊を奪った男が刑務所にいる」という話を聞きます。更に「金塊のありかは同じ刑務所の24人の囚人に刺青でほった地図を繋ぎ合わせると見えてくるらしい」と聞きます。
囚人たちは次々に出所します。実はアリシパの父親も刺青をほった男に襲撃され命を奪われたアイヌの氏族だったことが判明し、二人は共通の目的のために北海道を冒険することになります。
アイヌの逞しさを体現する少女
劇画的タッチが圧倒的なこの作品、アイヌ民族を題材にした作品であるため、もう少し文化交流的な志向の強い物語かと思いきや、いきなり序盤から杉元が暴れまわります。そして意外にもアイヌの少女、アリシパさんが肉食系、いやむしろ杉元が引くくらい命や罠に関してシビアな一面を見せます。
佐一に金塊と囚人の話を吹き込んだその人物が既に24人の囚人の一人だったことが判明し、その男の皮だけを剥いだ刺青人皮(いれずみにんぴ)をしまい旅に出る二人は正規軍や新選組を含む色々な敵対勢力と熊などの自然の脅威と向き合って成長していくのでした。
まとめ
第一話から壮絶なストーリー展開に心を奪われました。アイヌに伝わる伝承、日常で利用される実践的狩猟能力、どれをとっても新鮮で飽きのこないストーリーです。
アイヌの埋蔵金を奪って皆殺しにした男は「のっぺらぼう」と呼ばれていますが、杉元佐一という人間も特徴は、歴戦の証として体に刻まれた名誉の勲章だけで性格がピンとこないというか、のっぺらな闘争心の塊なのです。それでもアリシパさんとの交流の中で、アリシパさんにつられるように人間らしさを見せるところがこの作品を盛り立てて躍動感を表現しているポイントなのだと思います。第二話にも注目です。
文章:S.Shinichiro