新海誠監督が先陣を切った現代のアニメーション映画の可能性
2019年には4つの今年を代表するアニメーション映画が生まれました。その中でも、なんといっても注目を浴びたのが新海誠監督の『天気の子』でしょう。『君の名は。』以来、ラッドウィンプスと再びタッグを組んだ作品です。
今回のコラムでは、筆者の感じた2019年のアニメーション映画業界の流行について紹介していきたいと思います。
実は『君の名は。』は日本アカデミー賞「最優秀アニメーション作品」を逃していた!
2017年の日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品を獲得したのは「この世界の片隅に」であり、新海誠監督の元に栄冠が届くことはありませんでした。あんなに興行収入が話題になったにも関わらずです。しかし、2020年のアメリカ・アカデミー賞国際長編映画賞(旧外国語映画賞)には、新海誠監督の『天気の子』が出品されることになりました。
思い起こせば『千と千尋の神隠し』が2003年にアメリカのアカデミー賞を獲っていたことを思い出し、今回も期待しています。『天気の子』が海外でも評価されることは、もちろん嬉しいのですが、原作小説で予習をしておかないと、油断すると「何をうったえている作品なのか」という肝心なテーマが抜け落ちてしまいそうな、難解な作品であることも確かです。
そんな中わかり易くて、涙を誘う名作が2019年には生まれています。『きみと、波にのれたら』という映画です。
何度見ても変わらない感動を与えてくれる、次々に展開する水とスナメリと二人の恋人のラブロマンスは、自然に観客の心に浸透していき、クライマックスで昇華する圧倒的なストーリー性をもっています。キャラクターデザインも新鮮でアニメーションの新境地を開拓しているといって間違い無いでしょう。間違いなく今年ナンバーワンの長編アニメーション映画だと思います。
それでは、『天気の子』『きみと、波にのれたら』に続く作品を紹介します。
京都を舞台にしたセカイ系アニメ『HELLO WORLD』も注目すべき完成度を誇っています。読書好きな高校1年生の自分と10年後の自分が同じ刻の中ででデータ化された社会から恋人を救う為に奔走する姿は聖地巡礼も含めて話題になりました。
もう一つ『空の青さを知る人よ』も注目を浴びました。生霊のような、でも最後までよくわからない存在「シンノ」の真っ直ぐな心は、多くの長井 龍雪(ながい たつゆき)監督作品のファンの心を鷲掴みにしました。
ドラえもん系アニメが豊作だった2019年
一言で言って仕舞えば「自分が世界の中心にいるような顔で、恋する二人の運命を、世界ごと変えてしまう」といったストーリーが目立ちました。それ故に複雑化する世界観ですが、小説版の臨場感が半端ないので小説を先に読んでおくのもお勧めです。
『きみと、波にのれたら』と『空の青さを知る人よ』に関しては200ページ程度で小説版の単行本が出ているので夏休みの読書感想文で利用した子供達も多かったかもしれません。
ノベルを見て映画を見て、またノベルを見るという習慣は『ハリーポッター』若しくわそれ以前からあったかもしれませんが、若年層の文化としては、『君の名は。』が上映された2017年以降の流行なのかもしれません。
文章:Shinichiro.S