アニメコラム

スタジオジブリ作品 戦下を生きる兄弟の物語『火垂るの墓』をご紹介

原作は野坂昭如(のさか あきゆき)氏の短編小説で、野坂氏自身の戦争体験を克明に描いた作品です。アニメ化されたのが1988年のことでした。野坂氏は1945年の神戸大空襲で養父を、下の妹を疎開先の福井県で栄養失調で亡くしています。一応フィクションという形になっていますがノンフィクションに近い作品です。

『火垂るの墓』あらすじ

舞台は兵庫県神戸市と西宮市近郊です。戦争で両親と離れ離れになった(亡くした)清太と節子の兄弟が、いかに戦争を生き抜くかを描いた作品です。映画の冒頭で清太がドロップ缶を片手に道端で亡くなっている描写があります。

この瞬間、作者が悲惨な戦時下の社会の現実を鑑賞者に問いかけることが明確になります。ドロップ缶には節子の遺骨が入っているという説もあり、生身の人間が社会に守られなくなる状況の難しさが胸に刺さります。

『社会が失ってはいけないものを考えさせられる』

「火垂るの墓」は決して忘れてはいけない昭和を代表する作品です。そして単純な資本主義を訴えかける日本社会に対するアンチテーゼとなる作品です。この作品で浮き彫りになった未成年の社会的実力の無さ、そして、そんな弱者に対して無関心な大人社会をもう一度見つめ直すべきなのだと思いました。

清太は節子を心の支えに生き延びましたし、節子にとっては清太は暗闇の中にある一筋の光です。こんなにも美しい関係が現代にあったのならば、今の日本社会なら手を差し伸べることも可能でしょう。

 

今でも災害などで孤児が生まれることはありますが戦争孤児というのは社会の基盤が弱いだけに本当に深刻なものになり得ます。今一度社会が失ってはいけないものを考えさせられる作品です。

 

 

文章:Shinichiro.S

 

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