アニメコラム

手塚治虫の名作がアニメになって帰ってきた『火の鳥』第1回講談社出版文化賞児童まんが部門受賞作品(2004年)

出典:©TEZUKA PRODUCTIONS・NHK・NEP

手塚治虫氏が自身のライフワークとして取り組んだ『火の鳥プロジェクト』は2004年にようやくNHKのもとでテレビアニメーション化されました。

原作ファンのみならず、さらに世代を超えて人々に感動を贈る作品になりました。

まるで神様の化身が空から舞い降りるように

火の鳥とは要するにフェニックスとか鳳凰とか表現される神仏的存在のことです。普段は火を纏っており、100年に一度、自身を焼き尽くし幼体化することで再生し、永遠の命を得るという伝説の鳥です。作中では人間とテレパシーで会話する姿もあり、身近な天空の奇跡として崇められています。

不死鳥がテーマの作品だけあって、何世代にも渡って主要なキャラクター(人間)が入れ替わります。ちなみに、『火の鳥黎明編』の主人公・猿田という人物は『鉄腕アトム』のお茶の水博士の孫として設定されています。

時代を跨ぐ不死鳥の物語

主な舞台は、縄文期の日本のような場面もあり、最も信仰が熱かった時期の邪馬台国のようでもあり、ガンダムさながらの宇宙船のようなシーンもあります。

基本的に日本の歴史を辿っているので子供が観ても、教養の身につく作品に仕上がっています。

成長と恩恵

『ヤマト編』・『鳳凰編』・『宇宙編』・『愛のコスモゾーン』の4部作からなるこのアニメ作品は、宇宙の創造から人類の進化の行く末までを圧倒的な画力で表現したもので、科学(人類の叡智)がヒトを豊かに育む様子と合わせて、火の鳥という実態のある超常現象が参加することで「ヒトの限界」と「神の可能性」をうまく調和させて描かれています。

手塚治虫らしい独特な世界観

『火の鳥』は手塚治虫氏が戦争を乗り越えて養った生と死の物語です。

手塚治虫氏は宝塚歌劇団からインスピレーションを得たフェミニンな作風で有名ですが、シリーズ通して少年漫画で掲載されていた時期も、少女漫画で連載されていた時期もあります。

宗教的というよりは神格的なテーマ

手塚治という人物はアトムといいジャングル大帝といい、自己の内側に潜むカオス(混沌)を極めてわかりやすく解釈するのに長けた人物だと思います。しかし、その中でも神格的要素を前面に出した今作は「自由」や「救済」はもとより「自己実現」というテーマがあると思います。自己の能力や才能、個性を果たすためには自分一人では完結しません。しかし人間の形成するコミュニティーには、その時々で「共産的」だったり「資本主義的」だったりしますが集団化し協力し合うことで未知なる領域にも達することができる可能性を秘めているのです。

『火の鳥』では、そんな人間の本来の(未来的)豊かさを神様の力「火の鳥」によってポジティブに想像してみよう、という試みがなされていると思います。

文学的でもあり、哲学的でもあり、自然体なストーリーに注目!

確たる宗教観念を持ちながら独自の解釈を表現しているところに感銘を受けます。どの時代背景を切り取っても21世期の漫画/アニメ全盛期をも圧倒するインパクトのある世界観が描かれています。

NHKがアニメを放送したのもつい最近です。今一度手塚治虫ワールドに浸ってみてはいかがでしょう。

 

文章:Shinichiro.S

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