出典:cMakoto Shinkai / CoMix Wave Films
『言の葉の庭』は『君の名は』で一躍有名になった新海誠監督の短編アニメーションです。今作では年上の学校教師と靴職人を目指す高校生との純愛ラブストーリーになっています。
新海誠監督自身がラブストーリーを描くのは初めてと言っていますが、『君の名は』までの伏線として極めて重要な作品になっています。
高校生の秋月孝雄は、雨が降る日はいつも1限目をサボって新宿御苑という公園で靴のデザインの勉強をしていました。ある時、見知らぬ大人の女性が昼間からビールを飲んでいました。彼女の名は雪野百香里といいます。
百香里が孝雄に目を写すと孝雄は靴のデザイン画を描いていました。万葉集の短歌を言い残してその場を去る百香里の姿は、なぜだか少し寂しそうに見えました。雨が降るたびに親交を深める二人の感情はいつの日かお互いの心の支えになっていました。
自分が高校教師であることを隠したまま、自分の高校の生徒と親交を深める雪野百香里の姿は切なく心に響きます。
でも、夢を持った秋月孝雄という高校生には何故だか頼り甲斐があります。そして、二人は孤独という雨を共有したかったのかも知れません。靴職人を目指す孝雄に対して百香里が「私ね…上手く歩けなくなったのいつの間にか…」と話すシーンはとても感傷的です。
教師でありながらストレスでリタイア寸前の百香里を支えたのは、孝雄の夢を実現しようと努力する姿でした。今作において、新海誠監督が「3人目のキャラクター」と表現した『雨』の存在は主役である孝雄と百香里の心を繋ぐ接着剤です。
2つの才能が触れ合う時、確かに近年稀に見る純愛ラブストーリーが成立するのです。
文章:Shinichiro.S