出典:©山本崇一朗・講談社/「それでも歩は寄せてくる」製作委員会
お互い、いつも参っている。
放課後の将棋部部室で向かい合う男女・・・部長の八乙女 うるし(やおとめ うるし)は新入部員の田中 歩(たなか あゆむ)の気持ちに気付いている。
「お前、わたしのこと好きだろ?」「先輩は、かわいいです」
と、いつもこんな調子で、田中は告白はしない。将棋に勝ってからと決めているから。
一方のうるしも、わざと負ける気などない。
誰にも入り込まれたくない二人だけの空間。
だが、それだと部員不足で将棋部が存続できなくなってしまう。
あとふたり、幽霊部員でいいから・・・
将棋部はツキに翻弄されているようですよ。
ツキがキレイに無い!
うるしは、京都修学旅行のたった4日が耐えられない。
二日目には、田中のいないうるしに「タナカ~、タナカ~」と禁断症状が。
「わたしは田中とは、将棋を指したいだけじゃないんだ!」と自分の気持ちに気付く。
そして、落とし物にも気付く。
出発前に田中から貰ったお守りがないのだ!大慌てで道を引き返すうるし。
そして、お守りを咥えていた猫から取り戻し、ホッとして座り込んでいるうるしに、京都人は知らんふり。
そういえば、田中恋しさのあまり、マキに抱きついた時も、京都人は我関せずで通り過ぎる。
京都人の冷たさに、うるしの田中不足がさらに深刻になる。
修学旅行で発症したのはホームシックならぬ、タナカシック・・・
「田中募集」といったところか。
月がキレイ!
田中はマキと組んでいる。
「月がキレイ」は告白の時に言う言葉だと、マキはうるしに吹き込む。
そしてタイミングよく田中から電話。
最初に田中の口から出た言葉「月がキレイですね」で、うるしの中の田中渇望がひどくなる。
ツキがキレイに!
田中の中学時代の剣道部後輩が入学してきた。
その香川 凛(かがわ りん)は田中が剣道部ではなく、将棋部員であることに愕然とする。
凛は剣道部に連れ戻そうと、田中に剣道勝負を挑む。
このことを知ったうるしは「唯一の田中」を失ってしまう!と道場へ駆けつけるが、決着はすでに着いた様子。
「勝ちましたよ」田中の言葉にホッとするうるし。
やっぱり「突きがキレイ」に決まったんですね?
「部員、部員」言っていたのが、いつの間にやら「田中、田中」
相合傘、二人三脚、タイ焼きやお好み焼きの学校帰りデート、間接キス、図書室の勉強会、雨でびしょ濡れになり女子の家に立ち寄る・・・
現実世界にはないものが、いっぱい詰まってます。
文章:ヒトツメロバ